ゲスト参加型の「ライブ・エンターテイメント」に思う?!

 21世紀はこころの時代、「モノを売るのではなくコトを売る」ということが叫ばれて久しくなります。私も折に触れ、このことの重要性を人前で話す機会がある度に話してきました。一年ほど前、雑誌「販売革新」から、幕張新都心のイオンモールが社運を賭けて作った「イオンモール」の特集を組むので「サービスエンターテイメントの集客力」ということを主題にした執筆依頼がありました。このイオンは「お仕事体験テーマパークのカンドゥー」「吉本幕張イオンモール劇場」「東映ヒーローザワールド」他、ライブエンターテイメント施設を積極的に導入し、商業施設でありながら、買い物をしなくても半日、もしくは一日家族で楽しめる要素をふんだんにちりばめて、まさに「商業テーマパーク」の様相を呈していました。私はその時、少し違和感を覚えたのです。商業施設は商業施設本来の役割があるはずで、お客様が日常必要としている最寄的な買い物を始め、お客様にとっての新しい食事や商品を提供してくれるテナントの発掘と導入、多彩な品揃え、買い物、食事をしていて楽しい場所の提供、要は商業施設は食事や買い物をしていてお客様が満足できる場所の提供ができているかが重要なのだと思うのです。その点、イオンは、フラッグシップモールとして360の店数を誇りますし、新業態92店、千葉発出店92店と商業施設本来の役目を充分に果たしていますが、その本文を忘れて、エンターテイメントを売る「商業テーマパーク」なんていわれるようになったら、イオンという業界をリードして来た会社の先行きが危うくなるような気がしたのです。また、の数年来、商業界全体の雰囲気もそれを歓迎するかのように感じられ、心配になったからなのです。

 少し話が変わりますが、いつだったか日経MJを読んでいて第32回サービス業総合調査があり、「ライブ消費仕掛け増収」という見出しが大きく出ていました。その中でテーマパークやライブなどその場でしか体験できない「ライブ消費」には惜しまず、お金を使う消費者の様子が描かれていました。テーマパークではハウステンボスのことが載っており、ハロウィーンの仮装パレードの参加や、仮面をかぶって舞台上のダンサーの振り付けに合わせて皆で踊る仮面舞踏会に参加したお客様のことが載っていました。その他「ハウステンボス歌劇団」や花や光、音楽などテーマごとにエリア分けし多様な来園者が自分なりに楽しめるように工夫を凝らしているとのこと。そのためシニア、ファミリー、ヤングなど幅広い年齢層からの支持を集め、2013年度の売上は29.6%売上が伸長したとありました。そういえば私がいた東京ディズニーランドでは32年前のオープン時から、子供たちが参加できる「ディズニー・ミュージック・フェスティバル・プログラム」があり、あのアドベンチャーランドで吹奏楽、コーラス、ダンスを披露したり、幼稚園児から社会人がパレードやショーに参加できる仕組みを作っていました。最近では今年1月から始めた「アナ雪」のイベント「アナとエルサのフローズン・ファンタジー」では、パレードは1台のフローと、それにアナ、エルサ、オラフの3人が乗り、ゲストと一緒にアナ雪のテーマ曲「レット・イット・ゴー」などをゲストと一緒に歌いながら、30人ほどのショーダンサーと練り歩くという、それも今まで無いスタイルで、ルート上9箇所も止まってゲストとの触れあいを大事にしています。見方を変えれば、今までのディズニーの昼のパレード、夜のパレードみたいに何十台ものフロートと何百人ものショーダンサーを使ってのパレードではない、消エネタイプ(言い方を換えれば、投資を抑えた・・・笑)だけどゲストとの触れあいを大事にして成功しています。これもライブ感を大事にしていることの表れだと思います。この調査では他にチケット取次ぎの「ピア」の取材が載っていました。ピアの矢内広社長は「衣食を切り詰めてでも好きなアーティストにお金を使う傾向は続いているとのこと。日常の出費を抑える一方、年に数回のイベントやコンサートへの出費を惜しまない、同じ価値観を持った大勢の人と楽しさを共有しようとする人が増えているということです。ピア総研によると、劇場でコンサートや演劇を楽しむライブエンターテイメントの市場規模は13年に前年比15.2%増加し、過去最大の3842億円になっているといいます。

 よくライブエンターテイメントとライブイベントを一緒にして話している人を見かけますが、二つの違いは何が違うのでしょうか。

 ライブは「生き生きとした、生の、本物の」、エンターテイメントは「娯楽、演芸」イベントは「催し、催事」です。そうなりますと、ライブエンターテイメントといったら「お客様が直接演じる人と触れ合える、生の演芸、娯楽」を言うのでしょう。ライブイベントといったら「お客様が直接演じる人と触れ合える、生の一時的な催事、催し」を言いますのでイベントの方が期間限定的な要素が含まれますので、総称して言う場合には「ライブエンターテイメント」の方が良いと思います。

 また「ライブ」といったら、“お客様が参加し共にひとつのショー・を作り上げていくケース”と“ショーそのものが“生”でそのライブ間に直接触れることができるケース”の2通りあります。前者はハウステンボスやディズニーのように例えば舞台上でダンサーの振り付けでお客様が一緒になってショーを盛り上げる場合、後者はピアのようにプロの演奏家のコンサートや演劇を見に行くような場合です。

 私は冒頭の「ゲスト参加型のライブエンターテイメント」ということばは通常、成立しにくいのではないかと思っています。単なる「ライブエンターテイメント」であれば、生の演劇、ショーやイベントに直接触れ合えるという意味で成り立ちますが、ゲスト参加型となると、エンターテイメントを成り立たせるのが難しくなります。
ディズニーのようなテーマパークであれば、全てのエリアにテーマがあり、そのテーマに基づいてショーが構成され、そこでキャストがショーを演じ、ゲストにも参加してもらい思い出を作り上げていくことができます。だからこそ「ゲスト参加型のライブエンターテイメント」ということができますが、そのようにコンセプトが出来上がっていない、他のテーマパークや一般の演劇や音楽鑑賞、イベント、食事、買い物、のどれひとつをとっても、そのようなコンセプトがないので参加型とは言い難いのです。ただゲスト参加型を広義に解釈し、ショーやイベントのかかわりの度合いの濃い、薄いはあっても全て「主役はお客様」と考え、お客様と触れ合うもの全てが、ゲスト参加型と解釈すれば、成り立ちます。そうすれば、演劇や音楽鑑賞でもあの独特な劇場での雰囲気、演者とお客様とのそこを漂う空気の触れ合い、食事では食事の美味しさとその場の食事をしている時間のお客様と働く従業員の共有、双方で楽しかったねという時間を作り上げていくこと、買い物でも、お客様に商品をただ選んでもらうのではなく、お客さまのことを心底考え、お客様に合う商品をお奨めし、この人と会えて良かった、ここで新しい発見ができた、新しい気づきを与えてもらった、このような関係を築くこと、全てがゲスト参加型といえるのではないかと思います。

 言葉をどのように定義をするか、これは大事なことです。冒頭に上げた「サービスエンターテイメント」、これもきちんとした言葉の定義は無いように思います。
 モノの豊かさから、ココロの豊かさへといわれるようになり、サービス業が注目されるようになったこの20年、特にこのような用語が氾濫してきており、日本人として、言葉をもっと正しく使うようにしなければと切に思う今日この頃です。

2015年3月30日