「僕がワイナリーを作った理由」を読んで
この本の著者は「落希一郎」さん、日本のワインの長い黎明期から抜け出すのに一役買った方、今なお現役を貫いている方です。私はフードビジネスを生業としている仕事柄、少しはワインをかじってきました。ですが、実はあまりワインを分かっていないのです。せいぜい代表的な白ならシャルドネ、赤ならカベルネソービニヨンといつも自分の好みで飲むワインの品種ぐらいしかその味を知りません。ワインに詳しくない私でも少しはワインの世界に生きてきた人の気持ちを理解したいと、この本を読んでみました。ワイン一筋で生きてきたこの落さんと私は年も同じと言うこともあって、彼の足跡と自分の生きてきた人生を重ねながら、一気に読むことができました。この本を読もうと思ったきっかけは、ある仕事が縁で知り合った尊敬すべき友人がこの本をお持ちで薦めてくれ、聞いていると以前これもある会合で知り合った新潟のワイナリー・カーブドッチの友人も出ていると知ったことです。そのカーブドッチのワイン、「日本、それも新潟で、このような美味しい、本格的なワインができるんだとその存在がいつも気になっていたのです。それがわざわざ新潟まで行かなくても、その美味しさの秘密を探ることができるのではとそんな思いもありました。
調べてみると、落さんは現在、北海道で「オチガビ・ワイナリー」を経営されている様子、ワイナリーを作ることは時間がかかるし、相手は生き物、成功できるか否かやってみなければわからないことがある中で、私と同じ年で挑戦していると聞き、それもまたすごいことだと思いました。
私は1990年代後半から2000年の初めにかけて何度かアメリカのナパヴァレーを訪れ、ロバートモンダヴィ社や当時メルシャンの傘下に入っていたマーカム社に2度、3度伺いブドウ畑を案内してもらい、様々なワインの試飲をしてきたので、今では安くて美味しい、ナパのワインや隣のソノマのワインを比較的好んで飲んでいるのです。そういえば忘れられないことがありました。そのときに葡萄の木について説明してもらったのですが、「ワインに適した葡萄は3年目ぐらいから実をつけ始め、10年過ぎたあたりから本格的に実をつけ、20年、30年が若く絶頂期、それから徐々に収穫量が落ちてきて、50年も経つと、あまり実をつけなくなる。そうなると葡萄の木を根こそぎ切り倒し、若い葡萄の木に植え替える」というのです。それって、人間の一生に似ていると思い聞いていたら、その説明者は傍の畑を見ながら、これはもう実をつけなくなったので根こそぎ切り倒すと言い始めました、当時50才近かった私は自分が切り倒される感じがして、あまりにも残酷だ、可哀想だ思いながら、その50年経ち役目が終わる葡萄の木と記念撮影をし、別れを惜しんできました。
この本を読んでいて、私の疑問「何故新潟でワイン??」と言う疑問が直ぐに解けました。新潟は気候的には寒暖差があり問題はないのですが、やはりワインの葡萄の生育に一番大事な土壌を砂丘が広がる各田浜と言う場所を探し当てたと言うことです。探し当てただけではありません。その後の土壌の改良にも相当大変な苦労をしたようです。勿論本には苦労話には何も触れていませんが、人がやらないことをやるというのは苦労の連続であると言うのは容易に想像がつきます。多分、今、いらっしゃる北海道でもその土地にあったワイン用の葡萄を探し求め、また土壌改良に心血を注いでいるのだと思います。
またやはり資金繰りが大きな課題であったようです。さらに落さんは、今まで、余りものの食用葡萄で作ったり、外国から持ってきたワインを詰め替えたり、調合して造っていた日本でも、本物のワインを作りたいという情熱を絶やさなかったのです。そしてこのことが新潟に本核的なワイナリーを作り上げたのだろうと思います。私は情熱を持って挑戦する、好奇心を持つ、勇気を持つ、自信を持つ、継続するといったウォルトディズニーの生き方にも似た落さんに敬意を表したい気持ちで一杯になりました。
細かいことはここで書くことができませんが、ワイン作りの大変さを少しは理解できたような1冊でした。ワイン好きな方にお奨めの本です。
ハロウィン、収穫祭、美味しい葡萄の収穫の時期、
全国の美味しいワインを作ってくださる栽培家、醸造家、そして流通に携わる全ての方々に感謝!!