たかが40分、されど40分・・・

 オバマさんの広島訪問に思うこと。
今、私の目の前にある新聞2紙に「米大統領 広島で追悼」、「オバマ氏 広島で献花」、と大きく見出しが載っている。またサブタイトルで「核廃絶追求へ勇気」、「核廃絶へ決意」とある。この2紙はこと政治のこととなると、同じことでも論調がかなり異なり、かたや政府に厳しく、かたや政府に迎合し、都合悪いことは言わない傾向がみられるが、今回は若干の見方は異なるものの、オバマさんの広島訪問に関しては一致しており、勇気ある行動とともに好意的な評価をしている。

 それもそのはず、現職の米国大統領としては初めての被爆地、広島の訪問である。いまだにアメリカの国内世論では原爆投下について、「自分たちは悪くない、これにより戦争終結を早めることができた」という意見が根強い。また米国大統領選の共和党候補の使命が確定したドナルド・トランプ氏は「日韓両国の核保有を提唱する」ような状況である。今やアメリカは世界の手本たる国ではなく、自分たちのことしか考えない内向き志向の状況にある。そんな中で、よくぞ訪れたと、私自身もオバマさんの決断に敬意を表している。昨日以来のTV、ラジオ、新聞どの報道を見聞きしていてもマイナス評価は殆ど見られない。
 しかし、目を外に向けると中国のような「広島は注目に値するが南京はさらに忘れるべきではない。被害者には同情すべきだが、加害者の責任は永遠に逃れられない」といった見方もある。南京虐殺を日本政府は認めていないが、戦争とは非情なもの、また特異な状況を作り出すもので、私はあり得たのではないかと思っているので、この中国の言い分も分からなくない。私としては、無かったのならば、政府として中国へ断固抗議すべきであり、事実を示して反論すべきだと思う。私たちの時代は中学、高校時代に習った歴史で太平洋戦争前後の現代史については深く教わったことがない。曖昧なまま、戦後日本が民主主義の道をひたすら歩んで、経済大国になったとということしか伝えられていないのである。歴史は時の政府によって都合よく作り替えられてしまっているのではと勘繰りたくもなるのである。

 それはさて置き、ついつい、横道にそれてしまったが、目の前にある新聞2紙は珍しく、1面、2面、3面まで使っての報道である。それほど、昨日のことは我が国においては歴史的な意味があったと思う。
特に、前述した中国のコメントに見られるような「加害者、被害者」の枠を超えて、オバマさんは「米国を含む核保有国は“核兵器なき世界を追求する勇気を持たなければならない」と訴え、日本原水爆被害者団体評議会、代表委員で被爆者の坪井さんは「核兵器のない世界に向けて、あなたと共に頑張ろうと思う」と言っている姿を見て、完全に加害者、被害者の枠を超え、一歩も、二歩も先を見た人類の平和という観点から、心の底から絞り出すように話しているのに、私は感動すら覚えた。
 私は、支持政党はないが戦争だけは反対である。一度起きたら止めることができない戦争、当時の1940年代と違って米ロのみならず、多くの国で核保有を良しとする世界的な風潮がある中、最近では中国、北朝鮮の常軌を逸した行動は目に余るものがある。この2国に見られる異常な行動を世論に訴え、このままだと、日本が危ない、だから日本を守るために、軍備を増強しいつでも戦争ができる国にしようとしているのは許せない。中国、北朝鮮は政治的にも、経済的にも未成熟の国、そのレベルに合わせ、日本が力で対抗しようとするのは大人げないし、外交努力で解決すればよいと思うのである。憲法に謳われているように、日本は戦争をしない紳士の国、おまけに世界で唯一の被爆国である。戦争を放棄した日本が被爆国として、世界に平和を訴えて行けば、平和を支持する国々から支持され、強力なリーダーシップを発揮できると思うのは私だけか。世界に向かって、戦争の恐ろしさ、悲惨さを伝え,核の廃絶、すなわち戦争のない世界を作り上げようと、声を上げることができないのか、と思うのである。小さい頃、“ピカ ドン”と親が言っていた原爆、一瞬にして街が消え、日常の、普通の幸せが消えてしまう原爆、その後も白血病やケロイドに悩まされ、またそれによる差別に苦しみ抜いて亡くなった人達・・・広島だけで14万人、長崎で7万人の人が瞬時に亡くなり、原爆投下後、苦しんで亡くなった人を合わせると2015年時点で約46万人の死者になるという。今はその核兵器が1万5千もあるなんて・・・ひとたび第3次世界戦争にでもなったら、人類が一瞬で消えてなくなることを意味しているのである。

 そんな私だが、昨年、仕事で、広島を訪れる機会があった。その場が平和記念公園にある国際会議場であった。一仕事終えた後の私は祈念公園内を歩き、原爆ドームを見て、広島平和記念資料館(原爆資料館)を見ようと思ったが、足を止めてしまった。その後宮島にも行ってみたいと観光気分になっていたからだ。あの悲惨な写真、当時の資料を見たら、きっとこの後暗い気持ちを引きづってしまうのではないかと恐れたから足が止まってしまったのだ。長く人生やってくる中、多くの悲惨な原爆の写真や漫画(はだしのゲン)を見たりして、知ったつもりになっている自分、今、思うと恥ずかしいし、不謹慎極まりない。凡人たる所以である。
 その点、オバマさんは伊勢志摩サミット終了後、3時間かけて広島に到着、その後原爆資料館、原爆慰霊碑、そして17分に渡る演説、最後に原爆ドームを見てお帰りになったという。あの分刻みの多忙なオバマさんがである。5月27日は伊勢志摩サミットのことよりもこのオバマさんの歴史的な行動に敬意を表する私である。